1994年から続く地域情報紙『シンヴィング』の編集スタッフが作る情報サイト

洋画家 松田 朝旭さん

投稿日: 2011年11月29日

洋画家 松田 朝旭さん

毎日コツコツと絵画とともに歩む

初めて二科展に入選してから半世紀以上。
絵を描くことに情熱を傾け
常に向上心を忘れることなく
今なお、デッサンを日課として描き続けている松田朝旭さんに
絵と共に歩んできた人生について伺った。

教師をしながら制作活動

両親が共働 きで、小さい頃は一人で家にいることが多かったという松田さんは、外で遊ぶよりも家で絵を描いていることが好きな少年だった。大学では美術を専攻し、4年 生のとき二科展に『土蔵』が初入選。卒業後、中学・高校の美術教師として学生を指導する傍ら制作にも打ち込み、その後も二科展には毎年入選。数々の受賞も 重ねて50歳のときには会員になった。
地元・茨城では県芸術祭などに数多く出品・入選し、個展を開いたり、県内の学校をスケッチした『学校のある風景』を朝日新聞に連載するなど、活躍をしてきた。学校を早期退職した後は創作活動に専念し、古希を過ぎた今でもさらなる高みを目指して精力的に制作を続けている。

生涯の師との出会いと別れ

松田さんが画家として今日あるのは、日本芸術院会員だった(故)服部正一郎先生の存在が大きかった。「自分の師は服部先生ただ一人」という先生からは絵に 取り組む姿勢をはじめ、さまざまなことを学んだという。「絵とはどれだけまじめに打ち込めるかで良し悪しが決まる。良い絵を描くためには、とにかく真剣に 打ち込むこと」という服部先生の教えを心に留め、ひたすら絵に取り組んできたと振り返る。あまり多くを語らない先生から言葉の奥にある真意を学び、自分の 糧にしようと足繁く先生の元に通って、先生の一言に耳を傾けた。
一人一人の個性を尊重する先生は、自分の画風を押し付けたりはしない。自分で感 じ、自分で描いてほしいという先生に自分の画風を育ててもらったという。絵に対する真摯な姿勢を示し、自分の画風を追求することの大事さを教えてくれた先 生は、還暦のときに盛大に開いた画業40年を記念する個展の最終日に、安心したかのように逝ったという。

699person2建造物の表情を表現したい

松田さんがモチーフにするのは建造物が多い。しばしば海外にも足を運び、ヨーロッパの町並みやアンコールワットの遺跡群などを描いてきた。「ただ固いもの が好きなだけです」と笑うが、堅牢なものが一瞬見せるその瞬間の表情を表現したいのだという。ずっと変わらずそこに建つ建造物も、見る角度によって、季節 や時間によって、そして天気や光の具合によっても見え方はさまざまに変わる。いろいろな偶然が重なって「これを描きたい!」と思う瞬間が訪れるのだそう だ。そして、時には「神様が描かせてくれたと思うような作品」が出来上がることもあるという。
松田さんの近年の大作『菩薩塔』に描かれているア ンコールトム遺跡の四面菩薩塔も、刻々変わる表情に魅せられたモチーフの一つ。硬い石で造られてありながら、豊かな表情を見せる菩薩に強く心を惹かれたそ うだ。堅牢な質感を表現しつつも人々を慈しむかのような優しい表情の菩薩に、見る側も深い感動を覚える作品だ。

デッサンが毎日の日課

油彩画を制作する一方で、松田さんがライフワークとして続けていのがデッサンだ。長年愛用してきた色鉛筆とスケッチブックを持って、近所の利根川の土手を 散歩しながら気に入った風景を見つけては鉛筆を走らせる。60歳から始めた毎日の日課で描いたスケッチは、スケッチブック136冊、3000枚以上にも なった。
絵の根幹となるのはデッサン。絵筆を持って50年以上になる今でもその思いは強く、対象物を表現するトレーニングとしてのデッサンを怠 らないのだ。日々努力しまじめに取り組むことの大切さ、根気よく続けることの重要さ。毎日コツコツ続けていけば、少しずつ向上していける。そんな思いで一 日一日を積み重ねて今の松田さんがある。
決して現状に満足せず、常に「もっと上手くなりたい」という思いで筆を持つ。「好きだから続けられる」 と言うが、長い間、向上心を持ち続けることは容易いことではないだろう。松田さんの絵にかける情熱は、“根気”や“努力”という言葉を忘れつつある私たち が見習うべき姿勢でもあるに違いない。

699person3.jpg

日本の原風景を後世に

今、松田さんは日本の原風景を描いていきたいと思っている。老朽化し、朽ち果てていく建物。開発の波にのまれていく昔ながらの景色。人々の思い出の中にあ る風景が少しずつ失われていく。それは仕方のないことなのかもしれないが、そんな風景を少しでも描き残していけたらと思う。山や川、橋、木、石、社…まだ まだ描きたいものはたくさんある。「これが描きたい、というイメージをずっと追い求めていきたい」と創作意欲はますます高まるばかりだ。そして「見ること から学ぶことは多い」と月に1回は博物館にも足を運んでいる。
最後に「実は内緒なのですが…」と話してくれたのが、「実は去年の5月から毎日、 自画像を2枚描いているんです。毎日描いていると、少しずつ自分が変わっていくのが分かるかと思って」。その数はすでに1000枚以上と言うが、このス ケッチは誰にも見せるつもりはないそうだ。娘さんが生まれたときには成人するまで毎日娘さんを描き、お孫さんには毎月、絵手紙を送っているという松田さん にとって絵は生活の一部。そんな毎日の生活の中から、今後どんな新しい作品が生み出されるのか楽しみだ。

プロフィール

松田 朝旭  Asaaki Matsuda

昭和10年    茨城県稲敷市生まれ。取手市在住
昭和31年    第41回二科展初入選
昭和32年    茨城大学教育学部美術科卒業
昭和39〜52年    県立下妻第一高等学校に勤務
昭和43年    第53回二科展特選受賞
昭和52〜平成2年    県立取手第二高等学校に勤務
昭和60年    二科会会員推挙
平成7年    つくば美術館にて画業40年個展
平成11年〜    現代茨城作家展出品(以後毎回出品)
平成12〜20年    二科会評議員
平成18年    スケッチ50年個展(横浜岩崎ミュージアム)
平成22年    常陽芸文主催個展(水戸芸文ギャラリー)
平成23年    55年記念個展(取手アートギャラリー)
現在、二科会会員、日本美術家連盟会員、茨城県美術展会会員

最新クチコミ

 

現在クチコミはありません。クチコミお待ちしております。

クチコミをする

メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。
また、* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。
コメントと一緒に評価☆☆☆☆☆をお願いします。

CAPTCHA