vol.19:森と水と太陽のエネルギー舎 小林 一朗

vol.19:森と水と太陽のエネルギー舎 小林 一朗

  • 2023年8月9日 
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アウトドアインテリア

夏真っ盛りですね!キャンプなど、アウトドアを楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。

筆者はなんと言っても焚き火の「炎」が好きです。ゆらめく炎を見ていると、なんだか癒されるんですよね。

現代の生活でも、毎日の生活に「炎」を取り入れる方法があるんですよ。

今回は、ペレット/薪ストーブの販売・施工をしている「森と水と太陽のエネルギー舎」小林一朗さんにお話を伺いました。

暮らしをあたためる・ペレットストーブ

ペレットストーブとは、どんなものですか?

木質のペレットを燃料とするストーブです。

ペレットは、これまでゴミとして焼却処理されていた製材端材、木屑や間伐材などを原料とし、圧縮成形したもの。

ペレットを使う器具には、室内に設置するペレットストーブだけでなく、アウトドアで使える可動タイプやペレットオーブンなどがあるんですよ。

左の2台がペレットストーブ。右はペレットピザオーブン。

ペレットのBBQグリル。大きいので、鶏の丸焼きも作れます。

炎のある生活、憧れますね。

ペレットストーブでは、薪ストーブや暖炉と同じように、室内で炎のゆらめきを眺めることができます。

暮らしの中の炎は、暮らしそのものをあたためることができます。炎を囲んで集うような空間が家にあると、自然と幸せな気持ちになる。そんな空間作りを応援するのが、私の仕事です。

オーブン付きのペレットストーブもあり、室内で暖をとりながらオーブン料理を楽しむこともできますよ。

においや煙が出ないか心配です。

ペレットストーブは、屋外と吸排気管でつなぎます。強制吸排気型なので、室内の空気は汚れないんですよ。

どれもシンプルな外観ですが、実は先端技術を搭載しています。燃焼温度はコンピューターで制御され、安全装置が充実しています。スマホアプリで操作できるものもありますよ。

ペレットを完全燃焼させるので、においもほぼない。着火時には数分だけ多少煙が出ますが、適切に設置すれば排気でご近所トラブルになる心配はまずありません。

自然エネルギーの1つとしてのペレットストーブ

環境問題の観点から

パリ協定で、温室効果ガスの排出削減世界各国が合意し取り組んでいます

石油や天然ガスなどの化石燃料は、温室効果ガスの1種である二酸化炭素を排出する。そのため、二酸化炭素を排出しない、風力、太陽光、水力などの自然エネルギーに注目が集まっています。バイオマスも燃やせば二酸化炭素を排出しますが、森が育てば吸収されるとの考え方から「カーボンニュートラル」とみなされています。

木の端材を利用するペレットストーブは、バイオマス利用の1つです。

暖かさだけでなく、かがり火の役割も持つ屋外型ペレットストーブ。

ペレットストーブで暖房代が下がるとか。

日本のエネルギーは化石燃料に大きく依存していますが、ほぼ輸入に頼っています。

国際情勢によって化石燃料は価格が左右され、最近は電気代の高騰が大問題に。

その点、ペレットは国産で作れる。圧縮成形には電気を使いますが、国産なので比較的価格も安定。実際に、東北地方でペレットストーブを導入し暖房費が半減した例もあります。

ペレットストーブで環境問題に挑む

他の分野で仕事をされていたとか。

以前は半導体のエンジニアでした。微生物を使った水処理の研究や、NGO(非政府組織)での活動、環境専門の科学ライターをしていた頃も。有機農業に携わったり、オーガニックファーマーズマーケットを開催していた時期もあるんですよ。

色々な分野で知識が深まる中で、環境問題の深刻さを目の当たりにしました。人類の抱える環境問題は、「技術で何とかすれば良い」という次元ではなく、「資源や環境は有限である」ことを前提として社会の仕組みを大きく変える必要がある、と考えるようになりました

転機はありましたか?

震災があって、自然エネルギーを仕事にしようと心に決めました。

自然エネルギーの中でも、人の心と体をあたため、生活の質を向上させるペレットストーブの日本での普及を支えていきたいと思っています。

ペレットストーブを売る側も買う側も、そして社会に対しても良い点がある、「三方良し」を目指しています。

ペレットストーブ導入で、気をつけたいことはありますか。

ご家庭でペレットストーブを設置する際にお知らせするのは、毎年オフシーズンにメンテナンスが必要なことです。ストーブを長く安全に使用するために、オフシーズンに内部の灰を掃除するメンテナンスを十分にすることが大事です。

また、環境問題という大きな視点で見ると、ペレットストーブは、これまでゴミだったものを燃料とするのが利点であって、「ペレットストーブが素晴らしいから、どんどん木を切ってペレットを作ろう」となっては本末転倒です。状況をよく見極め、性急すぎない普及を目指す必要があります。

ペレットストーブ業界を牽引

私はつい沼にハマって深掘りしてしまいます。メーカーの情報を読み解くだけでなく、自分でも燃焼データをとって分析し、エビデンスを蓄積しています。

ストーブの設置、メンテナンス、コンピューターの設定など、全てを突き詰めてきたことが評価されて、講師を依頼されることが度々あります

こだわりが強いので、最初は業界内でも異端扱いでしたが、だんだんと私のやってきたことの重要性が認められて、応援されるようになってきたのが嬉しいですね

今、一般社団法人 日本ペレットストーブ工業会の理事を拝命しています。目指しているのはペレットストーブを環境と調和する形で国内の産業として成立させること、業界の底上げ、プロフェッショナルの育成です。

日本と欧米の違い

欧米では、近代化の中でも家に暖炉など炎がある文化が継続してきました。

日本は、近代化の際にいったん炎の文化から離れてしまった。

欧米主導でペレットについても国際基準であるISO規格が整えられつつありますが、日本でも並行してJIS規格を制定しないと、日本独特の住宅事情からかけ離れた規格が欧米主体で作られてしまう可能性があるんです。

世界と歩調を合わせるため、業界として頑張っています。

知識を生かし、社会に貢献する

ペレットストーブを扱うようになり、さらに環境問題を深く考えるようになったそうですね。

ペレットは、端材の中ではある程度品質の良い材から作るので、さらなる端材が出ますが、それを利用する方法があるのです。

薪の形に端材を固めたブリケット、人工薪です。

ペレットもブリケットも、材を圧縮成形するのですが、ブリケットの方がかかる電気代が少ない。

薪と比べ煙やススが出にくく、害虫がつきにくいメリットがある。

災害時に困ることの1つに、入浴があります。ブリケットは入浴施設のボイラーの燃料に使えます。地域の保養所の入浴施設にブリケットを防災備蓄する仕組みを作れないか、と考えています。

地域貢献への思いをお聞かせください。

これまでに得た知識を活かして、地域の問題を解決していきたいですね。

例えば、全国的に問題になっているナラ枯れが、つくばみらい市でも出始めました。

これまでのナラ枯れ対策は、コストがかかるのが問題でした。

最近の研究で被害木を速やかに伐採し「薪」に加工することで、原因となる昆虫カシナガを駆除できることがわかっています。被害木を焼却処分するのではなく、ペレットやブリケットとして有効利用するルートを作れないか、現在思案中です。

「森と水と太陽のエネルギー舎」ショールーム。常時、ストーブやオーブンの人気機種が展示されている。

人の心と体をあたためるペレットストーブを使うことが、私たちの環境を保全することにつながるなら、そんな嬉しいことはないですね。

日々の暮らしを豊かにするペレットストーブ。ぜひ、取り入れてみてはいかがでしょうか。

森と水と太陽のエネルギー舎

所在地:〒300-2358 茨城県つくばみらい市陽光台4丁目13番11

TEL:090-7173-1997

FAX:0297-34-1667

URL:http://renewable.small.jp/

営業時間 : 9~19時 不定休(見学の際はご予約ください)

 

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シンヴィング編集部

1994年創刊の地域情報紙シンヴィング。 もっと『守谷』『取手』『つくばみらい』を合言葉に茨城県南地域の情報をお届けします。

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