世界とつながる音楽に耳を傾けよう。
自分が生まれ育った地域に音楽を広めたい
そんな思いで取手市に音楽教室を開いて30年近く。
ファゴット奏者として演奏活動に忙しい合間をぬって音楽を志す多くの子どもたちを指導してきた。
震災後、音楽の力を強く感じ、人々を癒すコンサート活動も精力的に行なっている太田晶久さんに音楽に対する思いを伺った。
ファゴットとの出合い
みなさんはファゴットという楽器をご存知だろうか。260㎝の細長い管がU字形に曲がり、組み立てたときの長さが140㎝もある細長い木管楽器だ。音域が3オクターブ半もあり、木管部の中では最低音部を受け持つ。オーケストラでは伴奏を担当するいわば裏方的な存在だが、欠かすことのできない重要な楽器だ。
そんなファゴットに太田さんが初めて出合ったのは中学1年のとき。幼い頃から母の勧めもあってピアノを習っていた太田さんは、中学に入る頃には世界で活躍する音楽家になりたいと思っていたそうだ。そんなときに、家に訪ねて来たオペラ歌手で音楽大学の教授でもあった親戚のおじさんが持ってきたのがファゴットだった。たちまちその深い音色と広い音域に魅了され、この楽器なら音楽全般を表現できると感じ、ファゴットで世界を目指すことを決めた。オーケストラの中のファゴットは「野球でいえばキャッチャーのようなもの」。メロディーを奏でるフルートやクラリネット、オーボエなどの音に耳を澄ませ、旋律がもっとも美しく響くように音を合わせ、最適なリズムやテンポを作る。ファゴットの音一つでオーケストラ全体の演奏の良し悪しが大きく変わってしまうほど重要な楽器で、いわば「影の指揮者」なのだそうだ。
地域に音楽を広めたい
ファゴットを始めるとすぐに、おじさんの紹介もあって日本を代表する先生方に師事し、厳しいレッスンに明け暮れた。東邦音大付属東邦音楽高校から音楽の名門・桐朋学園大学に進学。大学生と一緒に世界一のファゴット奏者に指導を受けるなど、ハイレベルなレッスンを受けていたという太田さん。日本人が西洋の音楽を表現する難しさを感じつつも自分の音楽を追求し、また精神的にも技術的にも鍛えられ、夢に確実に近づいていった。大学生になる頃にはプロの演奏家として活動も始め、名古屋フィルハーモニー交響楽団を経て、数多くの在京オーケストラやボストン交響楽団と共演。常に演奏者として第一線で活躍をしてきた。
そんな多忙を極めていた30歳の頃、実家がある取手市(旧藤代町)で音楽教室を始める。オーケストラの演奏だけでは飽き足らず、音楽にあまり馴染みのない地元の人々にもっと音楽を広めたい、音楽を届けるような活動をしたいという思いがあったからだ。子どもたちにピアノなどを教える一方、クラシック音楽に親しんでもらおうと毎月コンサートを開催。これは「継続は力なり」をモットーとしている太田さんが現在でも続けている活動の一つだ。またイベント等で演奏したり、小・中学校〜大学、オーケストラ、市民バンド、全国警察音楽隊平成12年度研修会講師の指導にもあたってきた。
「オオタファミリー」で演奏活動
近年は美術や舞台芸術とコラボした演奏を行なったり、講演会で講師を務めるなど活動の幅を広げているが、数年前からは家族での演奏活動も始めた。当時小学6年生だった長女の「ボランティアで演奏がしたい」という一言をきっかけに、四男一女の5人のお子さんと共に「オオタファミリー」での演奏活動を開始。老人福祉施設や病院などに出張し、ピアノ、フルート、トランペット、コルネットなどを奏でる。子供たちは小さな体で精一杯音を表現し、表情豊かな音色で観客を魅了している。
太田さんが家族で演奏会をしているのは、子どもたちの思いを大事にしているのはもちろん、練習よりも本番が一番の成長の場と考えているからでもある。一緒に舞台に立つことで、言葉では教えられない表現の方法を子どもたちは学ぶ。それは自らも巨匠と呼ばれる人たちと一緒に演奏をしてきて実感したこと。だから子どもたちにも舞台で父と演奏することで何かを学んでほしいと思うのだ。親が子どもと一緒に体験をして手本を示す、態度で示すことで子どもは言葉で伝えること以上のものを心にしっかり刻んでいく。それは音楽に限らず、子どもに何かを教える上でとても重要なことなのかもしれない。
音楽を聴いて心豊かに
演奏家として、また指導者として長年音楽一筋に歩んできた太田さんが心かげていること、それは常に全力を出すことだ。自分のすべてを表現しようとする魂のこもった演奏に涙を流す観客も少なくないそうだが、演奏家としても観客と共感できたときに至福の喜びを感じる。指導者として生徒の演奏に伴奏をつけるときには、生徒の魅力が最大限に引き出せるよう音の一つ一つに気を配る。そしていくつもの音が一つのハーモニーとして奏でられたとき、生徒は深く感激し、太田さんも幸せな気持ちになる。音の共鳴、観客・演奏家との共感、これらを感じられることが音楽の最大の魅力だそうだ。
そんな音楽にもっと親しんでほしいという太田さん。「音楽を演奏することは技術があれば誰でもできるようになりますが、音楽を奏でるには豊かな感性と、音を聞く事ができる耳が必要です。そのためには演奏会に足を運んでよい演奏をたくさん聴いて欲しい」と音楽家を目指す人にアドバイスする一方、一般の人にも「よい音楽にたくさん触れることで、気持ちにゆとりができて心が豊かになれます」と音楽との対話を勧めている。
これまでも音楽の道を志す何人もの生徒さんを導いてきた太田さんの夢は、これからも音楽のスペシャリストを育てていくこと。世界で活躍したいという子どもたちの夢を実現する手伝いをしたいという太田さんに「スペシャリストとは?」と尋ねると「世界(社会)に貢献できる音楽家」。震災後、音楽家の間で「音楽の力で人々を元気にしたい」という声が多く聞かれた。そして実際に音楽に癒され、元気をもらった人も多かったに違いない。誰もがどこか落ち着かない気持ちを抱えて生きている今、改めて音楽の力を思う。「音楽のプロとして感動を伝え、音楽で人々の心を癒したい」それが太田さんの今の切なる願いだ。そんな太田さんは、これからも音楽を通して心の豊かさを届けてくれることだろう。
プロフィール
太田 晶久 Akihisa Oota
茨城県取手市(旧藤代町)生まれ。取手市在住
桐朋学園大学音楽学部卒業。
小沢征爾氏や(故)森正氏、元N響首席奏者、ベルリンフィル首席奏者、ボストン交響楽団首席奏者などの一流演奏家に師事。
プロの演奏家として活動する一方、1982年取手市に信楽寺学園音楽部(現オータミュージック)設立。自身の経験や学んできたことを広い一般の方に提供したいという思いで演奏活動や後進の指導に当たっている。東邦音楽学校元講師。
日本ファゴット協会会員
■インフォメーション
ムジカレッスンホールでの定期コンサート
11月20日(日)、11月27日(日)、12月4日(日)、12月11日(日)各日とも14時〜
入場無料。
取手市宮和田419
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