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和裁士 柴田 ふみ子さん

投稿日: 2011年10月24日

和裁士 柴田 ふみ子さん

和裁にパッチワークを組み合わせ、古い着物に新しい魅力を

「母の形見の着物を着たいのだけど小さいの。
どうにかならないかしら?」
友人にそんな相談をもちかけられたのをきっかけに、和裁にパッチワークを取り入れるという独自の方法で着物のリメイクを始めた和裁士の柴田二三子さん。
そのままでは二度と袖を通すことがなかったであろう着物が、何倍も素敵になって再生し、娘へ孫へと受け継がれていく。
柴田さんは古い着物に新たな命を吹き込むことに喜びを感じ、着物に元気をもらっていると語る。

今では着る機会も減った着物だが、一昔前までは日常着やおでかけ着として生活に溶け込んだものだった。年配の方はもちろん、若い方でも箪笥に母や祖母から譲り受けた着物が眠っているのではないだろうか。その着物を着たいが体型が合わない、かといって処分するのは忍びない、そんな思いを抱えている人も多いだろう。
「母の思い出が詰まった着物を、自分の体型に合うように仕立て直してほしい」。柴田さんはある日、友人からそんな依頼を受けた。その着物は小さすぎたと言う。15歳のときから和裁一筋で、これまで何十枚、何百枚と着物を縫ってきた柴田さんだが、さすがに小さい着物を大きく仕立て直すことはできない。悩んだ末に思いついたのが、以前に習ったことがあるパッチワークを用いる手法。“つぎはぎ”にならないよう、異なる布を組み合わせて柄のように足りない部分を補っていく。布の色を合わせ、デザインを考え、試行錯誤を繰り返して新しく生まれ変わった着物は、リメイクとは思えないほどの出来栄えで、友人もとても喜んでくれたという。

15歳で和裁の道へ

小さい頃から裁縫が好きで、人形の洋服などを作っていたという柴田さん。「手に職を」という母の勧めもあり、中学卒業と同時に「針子さん」になるべく和裁の勉強を始めた。和裁学校で学んだ5年間が現在の土台になっているが、その5年間は決して楽ではなかったという。「人より何倍もたくさん縫いなさい。それが上達の一番の近道です」と言われ、少しでも早く次のステップに進みたくて夢中で手を動かした日々。最初の1年は袖を縫うことだけに費やされ、辛抱強く習うことも学んだ。「心が曲がっていると、縫い目も曲がる」と言われ反発心を抱いたこともあったが、そのときの先生の言葉も今なら納得できる。同期の生徒が挫折して辞めていく中、柴田さんは頑張り通し、自分の成人式の着物を仕立てて無事に卒業した。そして一人立ちしてからはひたすら針を動かし、和服を仕立てて今がある。

696person2和裁を通してもう一度生きる喜びを

和裁に半世紀近く熱意を注いできた柴田さんだが、10年ほど前に病気を患い、精神的に落ち込んで針が持てなくなった時期があった。しかしある日ふと気が向いて、和布を使った手工芸品を発表している弓岡勝美先生の展覧会に出かけた。そこで京友禅やちりめんなどを使ったつるし雛や和風小物、色鮮やかな着物や帯などに出会い、柴田さんの心は一気に華やいだという。その作品が「自分には和裁しかない」、もう一度この世界を楽しみたいという前向きな気持ちにさせてくれた。そして早速針を手に取ると、縫うことで病気を忘れ、日に日に元気を取り戻していったという。「あの頃のことを思うと、今こんなに元気でいることなど想像もできませんでした。和裁に元気をもらいました」と穏やかな笑顔で語ってくれた。

色合わせが一番の楽しみ

今は和裁を楽しむことを第一に、生徒さんと一緒に着物をリメイクしたり、小物を作ったりしている柴田さん。生徒さんの多くはパッチワークを用いたリメイク術に惹かれ、手持ちの着物を自らの手で蘇らせたいと通ってきている。リメイクするときに最も重要なのは、着物と布との色合わせ。他の着物や羽織、襦袢、裏地などを合わせたり、端切れを使うこともある。色合わせ次第で着物の印象もがらりと変わり、最もセンスが要求されるところだが、柴田さんのセンスの良さは誰もが認めるところだ。とくに色の勉強をしたことはないというが、これまでたくさんの着物を手にしてきた長年の経験から感性が磨かれたのだろう。「古い着物と着物を合わせてピッタリ合ったときは嬉しくてワクワクします」と柴田さん。昔の着物も柴田さんの手にかかれば見違えるように輝く。そして自分の作品を喜んで着てくれる人がいる。そんな人たちの笑顔を見るのが何よりの喜びだ。

日本人の心を象徴する着物文化

「着物を着ると違う自分になれる気がするのです。背筋がピンと伸びて、自然と立ち振る舞いが丁寧になる。相手に対する思いやりの気持ちが仕草や行動に表れ、忘れかけていた日本人の心を思い出すのです」と着物の魅力を語る柴田さん。着物は窮屈だからと敬遠する人も多いが、窮屈だからこそ気持ちを引き締めることができる。着物を着ることで人としての心の在り方を再確認する、時にはそんな理由で着物を着るのもよいかもしれない。
和服はすべて手縫いが基本。ときにはいろいろな思いを抱えながら、またときには無心で一針一針、針を動かす。「集中していると日常を忘れることができて心が落ち着きます。それに母が大事にしていた着物をもう一度蘇らせることができて、母も喜んでくれていると思います」と生徒さんの一人は語る。手仕事を楽しみつつ、古い着物を再生して“生きた形見”として命を吹き込む。手間暇をかけること、物を大切にして継承すること、着物のリメイクはそんな大事なことも思い出させてくれる。
「いつか主人の母から譲り受けた紬をリメイクしたい」と柴田さん。今は合う布との出合いを待ちつつ、アイデアを膨らます日々。着物から帯を作ったり、コートに直したり、端切れはバッグや帯止めになるなど、何が生まれるかは柴田さんのアイデア次第。古布から作ったとは思えないほど斬新なデザインの作品を、これからも作り出していくことだろう。

プロフィール

柴田 ふみ子  Fumiko Shibata

茨城県つくばみらい市生まれ。つくばみらい市在住。
15歳より和裁の勉強を始め、和裁士に。
古い着物のリメイクを頼まれたのをきっかけに、和裁にパッチワークを用いて仕立て直すという独自の方法を創作。現在は自宅でこのリメイク方法を教授し、古い着物を再生させたり、端切れを使った和風小物も制作。ポイントを押さえた分かりやすい指導とセンスの良さが評判で、先生を慕って通う生徒さんも多い。

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