動物と人間が幸せに共存できる社会を目指して
イヌやネコの愛くるしい姿に癒される人は多いだろう。
しかし人間に愛される動物たちがいる一方
様々な理由で捨てられ、悲しい運命をたどる動物も後を絶たない。
そんなイヌやネコを一匹でも減らそうと
活動をしている「NPO法人動物愛護を考える茨城県民ネットワーク(CAPIN)」。
その活動内容や私たち一人一人ができることについて代表の鶴田真子美さんに伺った。
同じ“命”なのにまるで違う“重み”
世間ではペットブームと言われ、今やペットの数は子どもの数を上回るほどになった。家庭の中で人間の愛情をたくさん受けて幸せに暮らしているペットがいる一方、ちょっと外に目を向ければやせ細ったみすぼらしい野良猫が公園などをさまよっている現実。同じ“命”なのにこの違いはなんだろう。その矛盾が鶴田さんが動物愛護の活動を始めた原点だ。
CAPINが保護しているのは主にネコが多いが、鶴田さん自身は決してネコが好きだったわけではない。「どちらかというと苦手でした。だから、ネコが嫌いな人の気持ちも分かります。でもあるとき公園でネコを拾ったのです。1月の寒い時期でまだ4〜5ヶ月の子猫。あまりにもかわいそうだったので家で飼うことにしました。そして自分で育ててみたらふわふわと温かいネコの魅力に惹かれてしまって。マイペースと言われるネコですが、飼い主のことはちゃんと分かっていて飼い主には心を開いてくれるんです」と鶴田さん。ネコが好きになると、自然と野良猫たちも目に入り、あまりにも悲惨な野良猫たちの実態を知ることになる。
「
TNR」の活動を広めたい
野良猫はどちらかというと迷惑な存在として扱われることが多い。鳴き声がうるさい、ゴミをあさる、糞で街が汚れる等々。しかし一番の問題は出産によって不幸なネコが増え続けてしまうことだ。ネコは1年に3回出産でき、1回に多くて6〜7匹の子猫を産む。しかし、外暮らしは過酷だ。産まれても交通事故やカラス等の外敵により育つものはわずかで、人間による虐待も後を絶たない。
CAPINが力を入れている活動に「TNR」がある。「捕まえて(Trap)避妊・去勢手術をして(Neuter)元に戻す(Return)」活動である。それは今生きているネコは幸せに生涯をまっとうできるようにし、不幸なネコは増やさないようにするための活動だ。まず捕獲器を使って野良猫を捕まえる。そして病院に連れて行き病気の検査や治療、不妊手術をする。元気になったところで里親を探す。人に慣れないようなネコなら元いた場所に戻し、餌をあげシェルターを用意して地域の猫として地域住民で見守っていく。このとき手術済みであることの印に左右どちらかの耳に切れ目を入れる。このように耳カットされたネコは子孫を残すこともない。そのネコ一代限りの命を地域のみんなで見守るという「地域猫」の取り組みは全国に広がりつつある。
鶴田さんはこの活動を初めはたった一人で行なっていた。野良猫たちを見捨てることができず、捕まえては病院に連れて行った。労力もお金も根気もいるが、何もしてあげることができずに死んでいったネコたちが忘れられなかったからだそうだ。やがてそんな鶴田さんの活動に共感してくれる人が一人二人と現れる。捕獲を手伝ってくれる人、カンパをしてくれる人、里親を名乗り出てくれる人…。支援の輪は少しずつ広がっていった。
地域猫をコミュニティの一員に
もし不幸なネコを見つけたら私たちはどうしたらよいのだろう?一番の理想は自分で飼って「家ネコ」にしてあげること。とはいえすぐに飼える人は多くはない。そんなときは「TNR」をして欲しいという。たとえ1匹でも手術を受けさせてあげれば、将来増えるであろう何十匹もの命も無駄にすることがない。そして里親が見つからなければ「地域猫」にしてあげることだ。
TNRの活動を通して住民が地域猫を世話するようになった地区も増えている。野良猫に餌を与えている人が中心となって、地域住民が協力しながら猫の世話をする。地域猫を通してコミュニケーションが生まれ、地域の活性化にも一役買っているそうだ。手術をしたネコは発情することもなく、泣き声等で迷惑をかけることもない。餌をきちんと与えていればゴミ置き場をあさることもないという。野良猫も人間が共存する努力をすれば、立派なコミュニティの一員になれるのだそうだ。野良猫を増やさないという共通の目的のために、好きな人も嫌いな人も協力しあえるのがすばらしい。
CAPINでは捕獲器を貸し出したり病院を紹介するなどサポート活動をしているので、野良猫で困ったことがあったら気軽に相談してほしいと言う。
一人一人が動物愛護に関心を
日本人はまだまだ動物福祉に関しての意識が低いと鶴田さんは嘆く。動物を捨てたら犯罪であること、茨城県動物指導センターに収容されると犬は最短4日、ネコは即日か翌日に殺処分されてしまうこと、ネコの8割は子猫であり、親に避妊手術さえしていれば殺さずにすむ命であること、茨城県では年間7000匹以上ものイヌ・ネコが殺処分され、イヌの処分頭数は全国一の数であること、ガスを用いた窒息死は安楽死でなく、これには私たちの税金が投じられていること。このような現実を私たちはどれだけ知っているだろう。「まずは動物たちを取り巻く環境に関心をもってほしい」と鶴田さんは言う。一人一人が関心をもち小さなことから始めてみれば、やがて行政を動かす力にもなると考えている。「殺すためでなく、不妊手術・里親譲渡など生かすためにこそ税金を使ってほしい」と。
CAPINの会員は現在約70名。それぞれが出来ることを無理なく行なっている。辛いことも多いのでは?と尋ねると鶴田さんは「楽しんでやっています」と明るい。「私たちが動物たちに元気をもらっているんです。警戒した目で見ていたネコたちが餌をあげているうちに寄ってくるようになったり、甘えるようになると本当にかわいい。餌をあげに行くというよりネコ達に会いに行く感じですね。また保護したネコやイヌが里親が見つかってもらわれていくときは、本当によかったと心底嬉しくなります」と活動の楽しさを語ってくれた。
不幸なイヌやネコを増やさないための活動は終わりがないのかもしれない。それでも一匹でも多くの命を助けたいとこれからも鶴田さんたちの活動は続く。
プロフィール
「CAPIN」設立までの経緯・主な活動記録
平成20年12月
行政による犬猫の殺処分、実験動物・産業動物の扱いの実態、ブリーダーによる劣悪な繁殖現場を憂い、茨城県南在住の有志が集まり、任意団体「動物愛護を考える茨城県民ネットワーク」を設立。
平成21年5月
野良猫に関する相談・支援事業を開始(捕獲支援、病院紹介、病院搬送、里親譲渡支援など)。
平成23年1月
NPO法人となる。
平成23年2月
チャリティーイベント開催、動物写真家 野中典子、高澤守による合同写真展同時開催
平成23年3月被災地の動物レスキュー活動・保護預かりスタート
<平成22年4月〜平成23年3月の不妊手術頭数171匹、保護・譲渡頭数59匹>
平成23年5月全国の動物愛護市民団体と「全国動物ネットワーク」を設立、事務局を務める。
NPO法人動物愛護を考える茨城県民ネットワーク(CAPIN)
URL http://www.capinew.jp/
*HPには里親募集の案内や寄付・支援のお願いもあります。ぜひご覧ください。
投稿者プロフィール

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