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『コワン・ドゥ・フルノー』オーナーシェフ 名越 和幸さん

投稿日: 2011年7月21日

『コワン・ドゥ・フルノー』オーナーシェフ 名越 和幸さん

本場のフランス料理を届けたい

閑静な住宅街にひっそりと佇むレストラン『コワン・ドゥ・フルノー』。
周囲の緑に溶け込みそうな一軒家で提供される料理は超一流だ。
フランスの三ツ星レストランで修業を重ねたシェフ・名越さんは、正統派のフランス料理にこだわり地元・茨城の人に本場の味を知ってもらいたいと今日も腕をふるう。

690person2【「ガス台の端」のように】

守谷市郊外に位置する『コワン・ドゥ・フルノー』。店名が意味する「ガス台の端」は料理人にとって最も重要な場所。ソースの仕上げをしたり、煮込み料理を弱火でじっくり煮込んだり、魚の皮がパリッとするまでゆっくり焼いたり…。ゆっくりじっくり料理を仕上げる「ガス台の端」のように、お店の味が地域に少しずつ浸透していってほしい、オーナーシェフ名越和幸さんのそんな願いが店名に込められている。
都内のフランス料理の名店、フランスの三ツ星レストランと修業を重ねた名越さんがお店を開いたのは6年前のこと。修業を終えて久しぶりに戻ってきた茨城で、きちんとした洋食を食べられるレストランが少ないと感じ、もっと食文化を高めたい、“敷居が高い”と思っているフランス料理の味を気軽に知ってもらいたい、そんな思いで茨城にお店を構えることにしたのだそうだ。

【小さな目標を一つずつ】

小学生の頃から料理が好きだった名越さんは、母と一緒に台所に立っては料理の手伝いをしていた。見よう見まねで覚えたチャーハンを家族に作ってあげて「おいしい!」と言ってもらえたときの喜び。それが料理人としての原点だ。高校卒業後の進路を迷ったときも、料理を作って楽しかった、喜んでもらえて嬉しかったという思い出が料理人となることを決意させたという。
数ある料理の中でフランス料理を選んだのは「いちばん工程が複雑で難しそうだったから。難しいと言われると闘志がわくし、厳しい人のところで働くと余計やる気が起きるんですよ」と笑う名越さん。あえて厳しい状況に自分を追いこむことを選んだそうである。
とはいえ料理専門学校を卒業して、実際に都内の有名レストランで働き始めると、その厳しさは想像以上のものだった。厨房に立つ姿勢、包丁の握り方、素材の扱い方…何から何まで注意される。四六時中叱られてばかりの毎日に一人、また一人と辞めていき、一緒に入った20人の同期のうち一年後に残ったのは名越さんを含めてたった三人だった。そのような中でどうして頑張り通せたのか。「日々辞めることばかり考えていました。でも何も得ずに辞めるのも悔しいので、この料理を覚えたら辞めようと目標を決めたのです。そして一つの料理を習得すると次にあの料理を覚えたら辞めようと思って、その繰り返しでした。やがて叱られることも少なくなり、そのお店やシェフの方々との出会いに感謝できるほど自分が成長していました」。
目標は常に自分の近くに置く。手が届きそうで届かない、でも少し頑張れば届くような小さな目標。それをひとつ一つクリアしていくことで、少しずつ上に登っていける。つらいことも多いが、つらければつらいだけ自分の糧になる。そんな思いで料理人として20年を積み重ね、現在があると名越さんは語る。

【フランスの文化を感じたい】

都内のレストランで副料理長を務めていた20代後半、名越さんはフランスに渡る。フランスの文化を知り、フランスの空気を感じなければ本物のフランス料理の味は表現できないと思ったからだ。フランス人と十分にコミュニケーションが取れるようにフランス語を勉強し、何十件ものレストランに手紙を書いて受け入れてくれる店を探した。日本での実績を知る人のいないフランスでは、ゼロからのスタート。フランス人シェフのもと、自分の実力を信じて、要求以上のものを作り上げるよう仕事をした。またフランス人のシェフ仲間とは積極的に交流し、料理に対する姿勢や感性を学び取った。仲良くなったシェフの家に招待されることもあり、フランス人の家庭の空気や文化までも感じることができたという。
最初に働いたレストランでの仕事ぶりが認められ三ツ星レストランに移り、そこで料理人が一番憧れるソース係や副料理長という名誉あるポジションを与えられる。フランスで認められた理由を「自分の考えをきちんと伝えていたからではないでしょうか」と語る。フランスでは人種や年齢、性別などの壁はまるでない。実力がある者だけが上に立てる勝負の世界で、若い日本人シェフの意見にもきちんと耳を傾けてくれたそうだ。味に対して妥協せず、自分が作り出す味に自信があるからこそ先輩シェフにもしっかり進言できる。プロとしての意識の高さがフランスでの実績に繋がったのだろう。

【フランス料理を極めたい】

名越さんは今でも分厚いフランス語で書かれた料理本を手放さない。「フランス料理は日々進化しているので、自分も勉強を続けていかないと停滞してしまいます。停滞は即ち退化ですから」と常に努力を怠らない。その根本にあるのはフランス料理を極めたいという情熱だ。本当においしい物はそう簡単にはできない。「他の人達ができない料理を作れるからこそ、お客様は自分の料理にお金を出してくださる。そんな思いで自分の味を追及しています。そしていつか世界中の人が「美味しい」と言ってくれる料理を作りたいですね」と名越さん。自分の考案した料理がフランス料理の定番になるような、そんな料理を作り出すことが夢だ。

【小さな驚きを与える料理を】

フランス料理というとちょっと構えてしまうが、本来レストランとは楽しくリラックスして過ごす場。料理は楽しく過ごすためのアイテムだと考えている。だから会話のきっかけとなるような料理を提供したい。小さな驚きを与えるのが料理人の使命。お客さんが最初の一口を口に入れたときに、「わぁ!!」という表情をしてくれるのが料理人として何より楽しみであり、喜びを感じるときだ。「お皿にのっている物すべてには理由があります」と語る名越さん。食べるのがもったいないようなお皿の上の芸術品はこれからも進化を続け、温かな思いが伝わる味と盛り付けの美しさで私たちを楽しませてくれるに違いない。

プロフィール

名越 和幸  Kazuyuki Nakoshi

1972年 茨城県坂東市生まれ
高校卒業後、専門学校で料理を学ぶ。
『レストランひらまつ』(東京)で修業を開始。
『ル・レストラン・ドゥ・レトワール』(東京)副料理長
『ル・ブナトン』(フランス・ボーヌ 一ツ星) 副料理長
『ラムロワーズ』(フランス・シャニー 三ツ星) ソース係
『ラーンズブルグ』(フランス・バエレンタル 三ツ星)パティスリー部門シェフ
『ル・ビストロケ』(フランス・ベルヴィル 一ツ星) 副料理長
『ブルノー』(ベルギー・ブリュッセル 三ツ星) 魚部門シェフ
を歴任。
2005年 守谷市に『コワン・ドゥ・フルノー』をオープン。

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