㈱ライブリー代表 山下 郁子さん

㈱ライブリー代表 山下 郁子さん

  • 2009年3月28日 
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コミュニケーション

人材育成の仕事を通して見つけたこと。
接客マナーやコミュニケーションの取り方の奥にある、人を思いやる気持ち。
女性として、輝き続けることの大切さ。
子供を持つ女性が第一線で働くためには、まだまだ環境は整っていないが、社会環境を嘆くよりも、自分から始められることがあるのではないだろうか。

山下郁子さんは、ビジネスマナーやコミュニケーションの取り方、話の聞き方など、人間関係を円滑にするための接遇を教える人材教育の仕事をしている。研修先は一般企業や公共の施設、大学・高校など多方面にわたる。研修では自主性を重んじ受講生に講義を作らせるなど「自分自身で考えられる人材を育てる」ことをモットーにしてきた。

 

【現場重視の人材育成】
アクアワールド大洗などのテーマパークでは採用から関わり、スタッフと共に現場で研修をするスタイルを取っている。「私もスタッフジャンバーを着て接客をしながら、説明の仕方やお客様への対応の仕方を見ていきます。その場で、今の接遇についてレクチャーするので、机上の研修より理解しやすくなります」。同様に一般企業の店先での研修を行う事も多い。いつでも、受講生と同じ目線同じスタンスで関わることを大切にしてきた。
ある講演が終わり、受講生が「私、山下さんが普通のおばさんだったら、この話聞いていなかったと思います」と声をかけてきた。自分自身が見られていることに、はっとしたと言う。「仕事の経験を積んでいくだけではなく、自分を磨くこと。私自身が人生を楽しみ、充実した日々を送らなければと思いました」。

 

【これから社会人になる方に】
離職の「七五三」をご存じだろうか。中卒で7割・高卒で5割・大卒で3割の方が就職して3年以内に辞めるそうである。「不況で、狭き門をくぐり抜けて入っても、忍耐がなく、怒られることに慣れていない若者はすぐに辞めてしまう。次の就職では、自分の価値は下がってしまいます。(私に)だまされたと思って、とにかく3年間は頑張ってほしいですね」。
今は、携帯電話やインターネットの普及で、対面でのコミュニケーションの機会が充分ではなく、顔色をうかがう場面も少ない。敬語を使えず、目上の人との関係を築けない場合もある。「どんな場合でも、相手を大切に思う気持ちを意識し、それを行動として表すことが大切です。まずは観察をすること。今、相手は何をしようとしているのか、自分に手伝えることはないか探すことです。今、この人に何をしたら喜んでもらえるだろう、心の中にある相手への思いやりを行動に表すことで、よい人間関係が生まれます」。
そして、笑顔を絶やさないこと。
緊張していても、意識的に笑顔をつくること。明るい声を出すこと。「笑顔が相手の方に何かを届けることは必ずあるからです」。
言葉づかい、立ち振る舞いはもちろん重要だが、その姿の奥にある「相手のためを思う心」を忘れず、持ち続けてほしいと山下さん。

 

【子供時代の思い出】
子供の頃を、北海道で過ごす。コミュニケーションを教えている山下さんだが、子供の頃は「我が強すぎて、友達と協調するのが得意ではなく(笑)、たぶん親も育てにくい子供だったのではと思います。電車に乗ってどこまでも行ってしまう、そんな子供でした。親が過保護だったので、その反動だったかも(笑)」。
父親の仕事の関係で小学高学年からアメリカで暮らし、自分の力が、自分の人生を形成していくことを感じた。「けれど、今になっては、情を重んじる日本の文化はいいものだと思いますね。日本独特の侘び寂びの世界というか…」日本ではないものを目にしてきて、日本の良さに気づいたという。

 

【子育てと仕事の両立】
山下さんは中学3年生と中学1年生の子供を持つ母でもある。子育てに関しては、今まで学んできた心理学が役に立ったという。「例えば、子供の話を聞くときは自分のおへそを子供に向けることをルールにするとか、子供が靴を履く練習をする頃なら、履けるまでじっと待つとか。頭ごなしに言うのではなく、どうしたいの?と子供の意見を聴くように心がけました」。また、自宅電話はなるべく子供達に取らせ敬語の使い方を教えている。
子供が生まれて6年間は、専業主婦に。その後、仕事に復帰するが、子育てしながら働く社会環境は決して良いものではなかったと当時を振り返る。「保育所では子供の体調が悪くなれば迎えに行かなくてはいけないし、残業になっても24時間保育をしているところが少ない。女性が第一線で働くには、厳しい環境でした」それでも、どっちも頑張ろうと子育てと仕事を両立してきた。
そんなある日、家に帰り洗濯物の山と流しに置かれた洗い物の山を見て、涙が止まらなかったという。「心がつぶれてしまって…。そんな時に、50代になる知人の女性が、完璧じゃなくていいのよと声をかけてくれたんです。例えば、お金で解決出来ることは解決すればいいと」。家のことは自分でやらなければいけないと思わず、人の手を借りること。疲れていれば洗濯物をクリーニングに出し、空いた時間を作る。母親(自分)がしなければいけない事と、自分でなくても大丈夫なことを、生活の中で工夫してきた。子供抜きで友人と外食するとか、自分の時間を作る事も大切なこと。「子供が小さくて働いている方には頑張らないでと言いたいですね」。

 

【これから働くママへメッセージ】
子育ての時期を経て、また働きたいと思っている人には、専業主婦の頃から、是非社会復帰の準備をしてほしい。自身が専業主婦を6年間して仕事に戻ってみると「今は、社会の変化がとてもスピーディ。インターネットも普及して、どんどん変わっていく。私が仕事に復帰した時は、『浦島太郎状態』でした(笑)」子供と自分の世界だけではなく、もっと社会に関わって欲しい。女性労働者の支援をする組織21世紀職業財団でも様々な取り組みをしているので、公の組織を利用することも良いのではと山下さん。

 

【これからの自分、自分磨き】
「子供には、大学生になったら自分でやっていきなさいと言ってあるんですが(笑)」これからは、早く子育てを終えて、いろいろな国を訪ねたり、出来れば外国に住んでその国の文化に触れてみたいと山下さん。母であり、自分である。お母さんを卒業して、自分だけの時間を持つ日を楽しみにしている。

 

山下 郁子  Ikuko Yamashita

北海道生まれ。㈱西武百貨店企画部を経て人材教育会社に転職。
約10年間企業の人材教育に携わる。企業の社員研修、テーマパーク立ち上げにおける人材採用・教育・運営管理のプロジェクトに参加、人材教育ではリーダーを務める。
2002年独立。民間企業や公的機関における人材の育成を行う。時代に対応したホスピタリティーマインドを重視した研修を実施。「常に受講生に問いかける、考えさせる、そして発見」をコンセプトに数々の研修実績を持つ。医療冊子「眼科と経営」に連載コラム掲載中。
㈱ライブリー
http://www.lively-fellow.co.jp/
☎029-851-1298 E-mail : ikuko@lively-fellow.co.jp

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シンヴィング編集部

1994年創刊の地域情報紙シンヴィング。 もっと『守谷』『取手』『つくばみらい』を合言葉に茨城県南地域の情報をお届けします。

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