(独)医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター 山海 直さん

(独)医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター 山海 直さん

  • 2009年1月29日 
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研究所

私の目標は研究を通して社会に貢献すること。
7つの力と百万馬力をもった少年型ロボット「鉄腕アトム」。その国民的ヒーローの父親がわりとなり「人間の心」を説き「正義とは何か」を教えてきたお茶ノ水博士。
大きくなったら博士になりたい、一人の少年が子どもの頃に思った夢を叶え、研究者になった。研究室にはポトスの水栽培やミジンコを飼っている瓶が並び、それは生き物に対する愛情に溢れていた。

 

小さい頃はどんな子どもでしたか?

友だちといつも暗くなるまで外で遊んでいました。田んぼへ行ってヘビやカエルを捕まえたり、ハチに追いかけられたりしたことをよく覚えています。アリを空きビンにあつめてアリの巣をガラスごしに見ていたり、また、カエルの卵をバケツにいれてオタマジャクシ、カエルに成長するのを楽しみに見ていたこともはっきり覚えています。今、思えばその頃から「生き物」が大好きだったのかも知れません。

大人になったら何になりたいと思っていましたか?

大人になったら「博士」になりたいと思っていました。そのころの博士のイメージは鉄腕アトムにでてくるお茶の水博士。アトムにはなれないけれどお茶の水博士ならなれるかも、と考えていたのかもしれません。

学生の頃を思い出すと?

勉強したという記憶がほとんどありません(笑)。きっとこのころの勉強は「やらされていた」ものであってほんとうに自分からやったというものでないために記憶がないのでしょう。中学のときは水泳部、高校のときはラグビー部に入りそれだけで毎日疲れ切っていました。

獣医を志したきっかけは何ですか?

獣医師を目指したのは、受験のときに飼っていたジョニーという雑種犬が私の足元で血を吐いて死んでしまったのがきっかけです。フィラリアという虫が寄生していて激しい運動は厳禁だったのですが、私が近づいたためジョニーはうれしくて飛び跳ねていました。それがきっかけで血を吐いてその場で死んでしまいました。
ただその頃の学力では獣医になるための大学に入る実力はなく、大学の獣医学科に入るまでに2年かかりました。この2年間はたいへん苦しかったのを覚えています。皆から遅れるという焦り、何をやっても頭に入らないという焦りがあり精神的にかなりつらかったのを覚えています。今の時代の受験生も同じ思いをしているのでしょう。でもこの苦しかった2年間は今の私自身が一気に成長した時かもしれません。決して無駄ではなかったということを今ならはっきり言うことができます。

大学ではどんな生活をしていましたか?

音楽が大好きで池袋の歩行者天国などでストリートシンガーをやったりライブハウスで歌ったりしている時間が楽しかったですね。大学に入ってすぐに気づいたのですが、私の目標は獣医師になることではなく、獣医師になって社会に貢献すること、お茶の水博士のようになることだと感じるようになりました。そのころから研究者になることを目指すようになりました。大学4年間、大学院5年間、授業で使ったノートが1冊もありません。こんな私を友達や先輩、後輩が支えてくれてなんとか獣医師免許を取得、その後博士号を取得することができました。
大学院のときには研究というものが面白くなり、ほとんど家には帰らず研究室でずっと寝泊まりしていました。そのころ自分は研究者になろうという方向性を自覚したのかもしれません。

そして、霊長類センターで研究をするようになったのですね?

研究職の就職先などほとんどなかったのですが、他の大学の先生が私のことをおぼえていてくださり、今の霊長類センターへの就職話をもってきてくれました。
今の仕事は、サルを使った医科学研究、動物には感謝して研究をしています。
霊長類センターではポリオワクチンなどの国家検定のためのサルの繁殖や、アルツハイマー・パーキンソン・エイズなどの病気、不妊治療などの研究が行われています。私は繁殖、生殖に関連する分野を担当しています。

休日はどんな事をして過ごしていますか?

小・中学校のPTA会長を経験して、子どもたち、大学生、学校の先生、保護者らと話す時間がすごく増えました。人と人のネットワークの大切さはいつも強調するところです。子どもたちが教えてくれる事はとても新鮮であり、気付かなかったことがたくさんあります。
高校生や大学生などに講義をすると、若者ならではの発想を耳にすることがあり、私はとても嬉しくなります。それが間違っていても常識はずれであっても思ったことを堂々と話してくれることがとても好きなのです。
大人になればなるほどそれが出来なくなっていることを気づかせてくれました。教えることよりも彼らから教わることのほうが多いかもしれません。教科書に書いてあることよりも、世の中にはこんなに不思議なものがあるんだ、それを知ることはとっても楽しい事なんだという話が中心になります。
また、行きつけのショットバーで過ごす時間も私にとって重要な時間。店の仲間とたわいない話をすることが心地よい時間です。いろいろな分野の方々と話ができるのでやはり学ぶこともたくさんあります。

子どもたちへのメッセージをお願いします。

先日、中学の卒業式で話したことですが、15年間の間に嫌なこと、苦しかったこともあったと思う、その都度悩みながら選択して今の自分がいる、要するに今いる自分は最高の自分なんだ、ということ。あの時あーやっていればと考えても人生の比較はできません。今いる自分が最高の自分であり、自分が築いてきた歴史は変わらないものです。その歴史のうえに現在があり、これからどうにでも変えることができる未来がある、というような話をしました。
子どもたちに望みたいのは、自分のやりたいことを常に思いっきりやってほしいということ。中途半端ではなく思いっきりやってほしいということ。一所懸命やっている姿は人を感動させ、自分が困った時には必ず人が助けてくれる、支えてくれる、ということでしょうか。

山海 直(さんかい ただし)

1986年 獣医学修士号取得、獣医師免許取得
1989年 獣医学博士号取得、現在の独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センターに着任、現在に至る
1994年 日本不妊学会学術奨励賞受賞、オルガノン学術奨励賞受賞
1998年 日本実験動物学会奨励賞受賞研究分野は、獣医学、実験動物学、霊長類学。研究テーマはサル類の発生工学的基盤技術の開発研究。つくば市在住。
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シンヴィング編集部

1994年創刊の地域情報紙シンヴィング。 もっと『守谷』『取手』『つくばみらい』を合言葉に茨城県南地域の情報をお届けします。

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