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投稿日: 2008年1月29日

宇宙航空研究開発機構JAXA 益川 充代さん

 

 

子供が生まれてから生き物って面白いと興味がわきました。

地上から遙か400㎞の天空に浮かぶ国際宇宙ステーション・日本実験棟『きぼう』。「地上の生き物が宇宙に行ったらどうなるのだろう」という率直な疑問から始まったメダカの飼育実験。次のステージとして「宇宙メダカはどんなふうに育っていくのだろう」という実験の研究開発が進んでいる。

3世代続くメダカを育てよう

1994年向井千秋宇宙飛行士とともに4匹のメダカが15日間の宇宙旅行をした。現在も宇宙メダカの子孫がボランティアの手で育てられ、各地で元気に成長している。
JAXA筑波宇宙センターで、益川さんらのチームが開発を進めている装置は「メダカが宇宙で暮らす」ための装置である。宇宙ステーション『きぼう』での実験として2011年の打ち上げを予定している。「無重力の宇宙で暮らすメダカに子供ができて、孫になって世代交代していったらどうなるんだろう?ということを調べる実験で、これはNASAも出来ていないことで、とても難しいジャンルなんです」と益川さん。

私たちの身近にある宇宙実験

地上400kmにある宇宙ステーションからは地球の変化が良く見えるという。一方地球からも夕暮れか朝明けの頃空を見上げると光って見えるそうである。(位置はJAXAのホームページに載っているので確認を)。
重力のない宇宙では、どんな実験が進められているのだろうか。同開発員の本原守利さんはタンパク質実験の研究開発を担当してきた。「『きぼう』では、2010年頃までに100程度の実験を行う予定です。宇宙では骨や筋肉が弱ることは良く知られていますよね。寝たきりの人も同じことが言えるので老人医療に役立つ実験や、無重力を利用してクオリティーの高いタンパク質の結晶を作る実験から、副作用の少ない薬の開発なども進められています」。

生き物って面白い

仕事を離れると家庭の主婦でもある益川さん。小学2年生と保育所に通う4才の男の子の母親である。入社から5年目に子供が生れ、子育てが始まる。地球では全く意識しないが、赤ちゃんは重力に適応して首が座り、お座りをして、立つことができ、やがて歩くようになる。「育て方によって性格も変わってくる、環境の影響は大きいなと…赤ちゃんを無重力の宇宙で育てたらどうなんだろう?なんて考えましたよね(笑)」
「生物系の仕事はちょっと難しいと思っていたんですが、自分の子供が生まれたことで、生き物って面白いとすごく興味がわいて、宇宙で生き物を育てたいという気持ちが強くなりましたね」と益川さん。子供と自転車で競走したり、子供のユニークさに助けられ子育てでリフレッシュすることも多いそうである。

化学研究員の父とパン教室主催の母

化学研究員だった父親の仕事場で試験管やフラスコを眺め、自分も化学の道を歩んできた益川さん。大学では金属間化合物の研究をしていた。なぜJAXAに?「毛利衛さんが宇宙で金属間化合物の実験をしているのをテレビで見たんです。自分の実験が宇宙でなされている、夢のある職業だと思いました。他では出来ないことがここでは出来るのではないかと思い就職を希望しました」。
母親はパン教室の先生。生き生きと働いている母の姿から仕事って楽しいんだと思ったそうである。「母を見ていると、自分もずっと仕事を続けたいと思いますね」。

好きな仕事が出来る幸せ

仕事と家庭の両立のコツを伺うと第一に「まずは環境に恵まれていると思っています」。父が子供の面倒をみに来てくれる、夫は料理が得意、仕事を続けることに対して、家族が協力的にサポートしてくれている。
そして、機械で出来ることは機械にやってもらう。食器洗機や洗濯乾燥機を使ったり、買い物に行けない時は生協の宅配を利用、時には掃除を外注に頼むことも。
結婚してからのほうが、仕事を効率的にやることを考えて、前倒しで仕事を終わらせたりするようになったという。最初はワーキングマザーの本を何冊も読んで時間の使い方を研究したそうである。「深刻になってもやりたいことの全ては出来ないから、出来なかったら出来ないでいいやと思うことに。完璧主義ではないんです。子供は幼児教育よりもケガさえしなければいいかなと…」下の子が2才の時に海外出張があり、寂しがっていないかと連絡を入れると「結構平気でした(笑)親がいなくても子供ってたくましい。子供の強さを信じていいんだなと思いました」。
どれも100%は出来ないけれど、子育て60%仕事60%で合わせると120%になる。仕事を続けることが家庭でもメリットになって、人生を豊かに過ごせると感じているそうである。

宇宙から子供たちへ

「自分が飼っているのと同じメダカが宇宙に住んでいる。そう考えただけでもワクワクしますよね」と益川さん。「宇宙連詩という公募で選ばれた詩がきぼうに搭載されています。自分の作った詩が宇宙に行く、宇宙を身近に感じてもらうきっかけになればいいですよね」と本原さん。
国際宇宙ステーションは人が生活する宇宙の研究所。世界各国が協力しあって研究を進める人類初の「国境のない場所」であり平和のシンボルである。人々の温かい心が込められた宇宙ステーションには、地上での世界平和につながるたくさんのメッセージが詰まっていると感じた。
筑波宇宙センター展示室およびスペースライブラリーの見学は随時(無料)。10月25日(土)は秋の特別公開。普段見られない施設の見学もあり、毎年多くの来場者で賑わう。

プロフィール

益川 充代 Mitsuyo Masukawa

1995年 東京工業大学大学院理工学研究科卒業(修士)専門は触媒化学
1995年 宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)入社
これまでの担当業務生命科学系宇宙実験のための技術開発の実施スペースシャトルを利用した宇宙放射線実時間計測実験への参加国際宇宙ステーション用水棲生物実験装置の技術検討の実施
現在の業務国際宇宙ステーション日本実験棟『きぼう』搭載用の水棲生物実験装置の開発と、宇宙実験の準備を実施中