和菓子職人 まるやま千栄堂 丸山 卯さん

和菓子職人 まるやま千栄堂 丸山 卯さん

  • 2010年5月1日 
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和菓子

楽しくやっても365日、いやいやでも365日。どうせなら楽しく。

取手市戸頭の老舗和菓子店「まるやま千栄堂」の二代目として働く丸山卯さん。
2007年に和菓子業界の技術力・商品力の向上や、老舗といわれる和菓子店の伝統技術を守っていこうと、技術を公平に評価しようという取り組みが全国和菓子協会主催で始まった。
丸山さんはその第1回審査に応募し、見事優秀和菓子職に認定された。
茨城県では初、現在でも茨城県ではただ一人の「選・和菓子職」として研鑽を積んでいる。

和菓子屋の長男として育った丸山さんだが、子供の頃はあまり家業を意識したことがなく「毎日見ているから特別なものと感じなかったのかも。おやつもポテトチップスのほうが好きでしたし(笑)。家業を継ぐことに関しても、両親は自分のやりたいことをやればいいと思っていたようです。それでも、親戚の人から跡継ぎと言われたりして、漠然と跡を継ぐんだろうとは思っていました」。職人の父と店を切り盛りしていた母も、子供の前では普通の優しい父と母。「食べることが好きな両親でしたね。今から思えば、味の感覚を磨くことができたのかなと思います。外食できちんとした料理を食べたり、家でもきちんとダシを取って料理したりとか。と言っても、店が忙しく料理に時間がかけられない時は、インスタントの場合もありましたが(笑)」。

 

【空手道で鍛えられた精神】

運動が好きだった丸山さんは、小学2年生から大学まで空手を習っていた。高校は全国一厳しいと言われる土浦日大高校の空手道部に入部。「精神的に鍛えられました。部活の休みはなかったし。例えば、部活中に走って来いと言われ、終わりにしていいと言われるまで走っていたら、3時間が過ぎていたなんてこともありました」。
後に和菓子店「三原堂」に修業に行った時も、空手の稽古を思い出すとつらさも感じられなかったという。強い精神力を持って和菓作りに励んでいた丸山さんだが、同じ修業中の仲間は製菓学校出身が多く、知識や技術では遅れを取っていた。「出遅れスタートでしたからね。自分でもやれるんだ、負けたくないという気持ちでみんなが休んでいる時に練習をしたりしました。今思えば、空手をやってきたことが、自分を鍛える基礎になっていたのかもしれない」と丸山さん。

 

【塩梅がいいということ】

美味しい和菓子を作りたい。その思いを強くし、修業を終えて実家でもある「千栄堂」に戻った丸山さん。和菓子作りで大事に思うことは「塩梅(あんばい)」が良いということ。塩梅とは、料理の味加減を指す言葉だが、物事や身体の状態がちょうどよいと言った意味もある。
「お菓子作りが『作業』にならないように気をつけています。配合とか手順はあるのですが、それがいい塩梅にならないといけない。それは自分の感覚としか表せないのですが…」。
和菓子作りは、自然を身近に感じるものだと言う。一日一日の気温や湿度によって、配合も機械の調子も変わってくる。季節やその日の状態によって、餡を練っていても全然感覚が違っている。自然は何も言ってくれない。その中で、ちょうど良い塩梅を見つけ出し、和菓子を作っていく。何も言わない自然に耳を傾けるところに和菓子作りの面白さがあるのではと丸山さん。

 

【創作のヒントはあちこちにある】

「何でもお菓子と結び付いちゃうんです(笑)」。休日や子供と遊んでいる時も、ふとしたことに創作菓子のヒントがあると言う。例えば、町を歩いている時は木々や花の色形が、食事をしていても食材が気になるそうだ。「トマトを見て、これお菓子にならないかなって思ったり。それから、子供のほっぺたが塩梅がいいんですよ(笑)」。
丸山さんは3才と1才半の子供のお父さん。子供のほっぺたの柔らかさが餅と同じと考えてしまうのはさすが職人である。創作菓子を作る時は、子供に食べさせてみる。「子供は正直だから、美味しいものはいくつでも食べる。でも、美味しくないと一口食べておしまい」子供たちが丸山さんの審査委員でもある、ほほえましいエピソードである。

 

【おいしい和菓子を作りたい】

2007年の「選・和菓子職」の審査では、応募してはみたものの、専門誌などで紹介されている有名な職人が名を連ねており、そうそうたるメンバーにこれは受からないだろうと思ったそうである。ただ、やるからには落ちても何かしら残してやろうと審査に挑んだ。授賞式で名前を呼ばれた時は、まさかと思ったそうである。「嬉しいというよりびっくりしました。帰る時になってやっと実感が沸き、嬉しいと思いました」。
これからも、もっと美味しい和菓子を作っていきたいと語る丸山さん。「日本で昔から食べられてきた和菓子は、餡や餅、寒天など食物繊維が豊富で身体に優しいものが原材料。実は太りにくいお菓子でもあるんですよ(笑)。今までの伝統菓子も大切にしていきながら、新しい素材を取り入れた和菓子も作っていきたい」。
いろいろなことに興味を持って、わくわくする気持ちをいっぱい持って、感激したことが人の力になる。経験は無駄にはならないから、たくさんの経験をして、あきらめないこと。つらい時こそ笑って、笑顔を絶やさずにいきたいと丸山さん。「嫌だな、つらいということは誰しもあると思います。楽しくやっても365日。いやいややっても365日。どうせやるなら楽しくやりたいですよね。」なんちゃないが口癖だという丸山さんの元気の素は、その笑顔にあるのでは。

 

 丸山 卯  Shigeru Maruyama

1980年 取手市生まれ
土浦日大高校、中央学院大学卒業後、文京区本郷昭和7年創業の和菓子店「三原堂」で修業、修業を終えまるやま千栄堂に入る。
2007年 和菓子作りの技術を認定する第1回「選和菓子職」で、茨城県では唯一人の優秀和菓子職に認定される。
2008年 豆を用いた和洋菓子コンテストで優勝
2007年、2008年連続で東和会が行っている品評会で最優秀賞受賞

■ショップインフォメーション
まるやま千栄堂
取手市戸頭4-16-12
☎0297-78-0404
※6月8日〜16日まで日本橋三越にて実演販売を実施します。

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シンヴィング編集部

1994年創刊の地域情報紙シンヴィング。 もっと『守谷』『取手』『つくばみらい』を合言葉に茨城県南地域の情報をお届けします。

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