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投稿日: 2017年12月6日

取手アートプロジェクト・パートナーアーティスト 宮田 篤さん 笹 萌恵さん

空想?現実?「リカちゃんハウスちゃん」が<br />みんなの心に住み着いた

空想?現実?「リカちゃんハウスちゃん」が
みんなの心に住み着いた

取手東小学校に通う女の子「リカちゃん」と、
その保護者兼住居「ハウスちゃん」を主人公にした
マンガ「リカちゃんハウスちゃん」。

1年に1冊ずつ増えて、
統合前の井野小学校に入学した
「リカちゃん」は6年生になり、
マンガも6冊目になった。

マンガを制作しているのは
美術家の宮田さんと笹さん。
マンガの題材はすべて
子どもたちや地域の人たちから集めたもの。
マンガを通して地域に生まれたものとは?
そして「リカちゃん」はこの先どうなる?

現実の中に突如現れた「リカちゃん」と「ハウスちゃん」

「現実の中にフィクションを作れば
何かが生まれるかな?」
そんな興味から
「リカちゃんハウスちゃん」は始まった。

取手アートプロジェクトの活動拠点である井野団地で、
住人と共有できそうな活動を通して
新しいコミュニケーションを生み出そうと、
団地の掲示板にマンガを掲示することを考えた。

といっても二人が作ったのは
団地に引っ越してきたという設定の
「リカちゃん」と「ハウスちゃん」の登場人物だけ。
キャラクターが決まるとイラストを手に
道行く人や団地内の交流の場である
「いこいーの+タッピーノ」などで
地域の人に声をかけ、キャラクターへの疑問質問、
この二人が団地にいたらどうなる?
どんな生活をしていると思う?など、
自由に語ってもらった。
そして会話の中から得たヒントを元に話を展開し、
井野団地を舞台にしたマンガを創作した。

そんなある時
「この子、何歳なの?」
「まだ決めてないけど…」
「隣に小学校があるよ」という会話から、
小学校に入学させることを思いつく。
登場人物はフィクションながら
リアリティを持たせることが大事と、
わざわざ井野小学校に足を運び、
入学の許可をもらうことができた。

子どもたちの中で生きる小学生の「リカちゃん」

さて小学生になった「リカちゃん」。
小学生の日常は小学生に聞かなければ分からない。
小学生への取材を試みたところ、
学校も快く応じてくれて、
昼休みに図書室で
子どもたちとふれ合う場を設けてくれた。

こうして小学生の「リカちゃん」が動き始めた。
月1回のペースで学校に通い、
子どもたちと話をする中で
マンガのネタにできそうな内容を探す。

また図書室にポストを置き、
「リカちゃんの来年の髪型はどうしよう?」
「ハウスちゃんと遊びにいくならどこに行く?」
などのお題を出して
子どもたちからのお便りを募集する。
「〇〇先生を登場させて」など、
子どもたちのリクエストにも応える。

リカちゃんは毎年進級し、
井野小を含む3校が統合され、
取手東小ができたときには
学校から「転籍証明書」も発行してもらった。
5年生だった昨年は飼育委員、
6年生になった今年は図書委員。

マンガの内容はどこまでもリアルで、
同小の子どもたちなら共感できたり、
笑えたりするお話ばかり。
まるで実在しているかのように、
リカちゃんはマンガの中で生き生きと動いている。

相手にイメージを委ねみんなの手によって成長する

「自分たちはフィクションを投げかけただけ。
リカちゃんはみんなの手によって成長し、
リアリティをもってきたんだと思います。
詳細な設定を決めず
相手にイメージを委ねることで想像力が働き、
自分に合わせて設定ができる。
歩み寄れる余白があったことで、
みんなで共有できるようになったのではないでしょうか」と、
二人はリカちゃんがみんなに受け入れられた理由を想像する。

人からアイデアをもらうという発想は、
ワークショップがきっかけだった。
参加者が言葉を繋いでいって
お話を作るというワークショップで、
言葉を書いた紙を重ねた「微分帖」という冊子には、
思いがけない言葉が並んだ。

書き手にとっては日常の当たり前の出来事を書いていても、
その中にその土地ならではの言葉や生活習慣が紛れ込んでいたり、
何気ない情報が他の人には新鮮な内容だったりする。
他人の言葉の中から、
新しいものを創造する楽しさに気づいたのが
「リカちゃんハウスちゃん」の誕生につながった。

地域とのつながりは「ちくちく校歌」にも

活動について取手東小の湯原徹教頭は
「いろんな人と関われることはありがたいこと。
アーティストとの触れ合いが、
子どもたちにとって何かのきっかけになるかもしれない。
豊嶋俊彦校長も、ぜひリカちゃんが
6年生と一緒に卒業式ができるようにしたいと考えています」と
歓迎している。
学校に通い始めた当初はお互いに遠慮がちだったが、
今では子どもたちが二人の周りに集まって、
気さくに学校の話などをするようになった。

学校や子どもたち、地域とできたつながりは、
3年前の井野小閉校時に
「ちくちく校歌」の制作にもつながった。
子どもたち、先生、保護者、
地域の人たちも協力して
校歌を一文字一文字フェルト生地から切り取り、
台紙となるもう一枚の生地に
「ちくちく」と縫い付けていく。
こうしてのべ3300人以上もの人が関わり、
多くの人の思いが込められた
660枚の「ちくちく校歌」は、
閉校式の体育館を華やかに飾り、
子どもたちだけでなく
地域の人たちみんなの思い出となって共有された。

街中のアーティストとして

「リカちゃんハウスちゃん」や「ちくちく校歌」を通して、
地域の新たなコミュニケーションを生み出した
宮田さんと笹さん。
「自分たちは素材を置いただけ。
アートって何?フィクションって何?という話題を提供でき、
いろんな人と関わるきっかけ作りができたなら、
街中のアーティストとしての役割が果たせたと思います。」

フィクション(空想)とリアリティ(現実)との
融合がもたらす変化や反応、
それらをまとめてアート作品というなら、
地域の人みんなが作品の一部であり、
人々の日常生活の中に
アートを浸透させることができたのかもしれない。

さて3月には小学校卒業を控えているリカちゃん。
「それからどうする?」が目下の課題。
中学校に進学する?
別のキャラクターが登場する?
引っ越しちゃう?
決めるのはリカちゃんを見守るすべての人たち。
「答えは自分たちの中にはありません。
みんながリカちゃんとハウスちゃんを
どう発展させていくのか、
楽しみに見守っていきたいと思います。」

プロフィール

空想?現実?「リカちゃんハウスちゃん」が<br />みんなの心に住み着いた

取手アートプロジェクト・パートナーアーティスト
宮田 篤さん[Atsushi Miyata]

1984年愛知県生まれ。愛知県立芸術大学美術研究科美術専攻修了。
2010年 「ふしぎの森の美術館」広島市現代美術館
2014年 「美術館で夏休み―いつものミチのひみつキチ」刈谷市美術館(愛知)
2017年 「ポコラート全国公募vol.6受賞者展」3331 Arts Chiyoda(東京)など

笹 萌恵さん[Moe Sasa]

1986年東京都生まれ。東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。
2009年より『宮田篤+笹萌恵』として活動。
2015年 「あざみ野こどもきゃらりぃ」横浜市民ギャラリーあざみ野(神奈川)
2016年 「音をかたちに、かたちを音に」安曇野市穂高交流センター「みらい」(長野)